平成9年度科学研究費補助金

重点領域研究 研究状況報告書

「超高エネルギー天体物理」

研究期間

平成7年4月 〜 平成11年3月

平成9年8月

領域代表者 東京大学・宇宙線研究所・教授・木舟 正

連絡先電話番号 0424-69-9592

領域略称名:高エネルギー天体

領域番号:268

1. 領域全体の研究目的

● 本重点領域の研究は天体の非熱的高エネルギー現象の解明を目的とする。その直接的な観測手段として高エネルギーガンマ線天文学がある。1991年に打ち上げられた米国のガンマ線衛星により高エネルギーガンマ線源は現在約150個以上が発見され、電磁波の多波長観測を特色とする現代天文学において未開拓であった最短波長領域に高エネルギーガンマ線観測の窓が開き確立した。この波長領域でのみ明るい天体が続々と発見され、これまでの想像を越える宇宙の活発な高エネルギー現象が明らかにされつつある。

● ガンマ線観測衛星は大重量大型である必要性のため、我が国に於ては未だ実現の見通しがなく、素粒子物理学など天文学と物理学との境界にあって今後の爆発的な発展が期待されるこの分野において欧米に遅れをとらざるを得ない現状である。

● 一方地上から超高エネルギーガンマ線を観測する手段があり、衛星観測より 1 〜 2 桁高いエネルギーのこのガンマ線の観測も最近確立した。この領域に於ては米国のグループと共にわれわれのグループが超高エネルギーガンマ線源の発見と観測方法の確立を先導している。 米国グループは 4 個、われわれは 3 個の超高エネルギーガンマ線源を発見確立 し、その他予備的結果を含めると総計10個強の源数があり、現在急激に増大する兆しが ある。

本領域によって地上からの超高エネルギーガンマ線観測を一層推進させ、衛星観測との間の観測の空白領域を埋める。

● 「高エネルギー天体」 の観測研究の現状を、X 線天文学と X 線源/ガンマ線源の発見数で比較すると、我国のX線衛星が開始された1970 年代半ばに対応している。本領域も X 線天文学が遂げたような急速な発展が期待される。

● 電波、赤外、X線さらに元素合成や宇宙線研究など、天文学の他波長分野との境界領域の研究題目が爆発的に増大しつつある。これら天文学の諸波長領域、素粒子物理学、宇宙線物理学などの境界領域に新しい活性的な研究グループを開発することが本領域の目的である。

2. 領域内における研究組織と研究班の連携状況

● 組織

  総括班、計画研究(2つ)、公募研究

  宇宙線研究と天体研究の諸分野及び素粒子・原子核研究

表1:公募研究の採択件数

平成7年度

平成8年度

平成9年度

A01(計画研究 A : 最高エネルギー宇宙線研究)

2

2

1

A02(計画研究 B : ガンマ線観測)

A03(宇宙線研究)

A04(理論的研究)

合 計

23

24

23

● 総括班の活動

 - 総括班会議 : 領域の長期的展望、研究会による領域全体の結合 

 - 領域研究会 : 計画研究、公募研究及び関連分野にまたがる総合的検討

  含ポスターセッションによる諸報告

  ◯平成7年度 富士吉田市経団連人材開発センター

  ◯平成8年度 葉山町総合研究大学院大学/湘南国際村

  ◯平成9年度 埼玉県比企郡嵐山町国立婦人会館(12月に予定)

    - 理論研究会 : 観測データの解釈など領域の諸テーマの理論的検討

  ◯平成7年度 東京都立大学国際交流会館

  ◯平成8年度 同 上

  ◯平成9年度 立教大学でのパルサーに関する国際ワークショップを共同で推進企画

 (11月に予定)

- その他、小規模集会、研究打ち合わせなどを適宜。海外での会議への派遣(平7:1回、平8: 3回、平9: 現在までに3回。開発研究、進行中の観測研究の活性化

3. 領域内の研究の進展状況とこれまでの主な研究成果

 ●超高エネルギーガンマ線(1000 GeV 領域)源の確立/ガンマ線源数の増大。

最近1年間の新しい成果は超新星残骸(SN1006)、パルサー星雲(帆座パルサー)、活動銀河(Mrk421, 501)からの超高エネルギーガンマ線の検出。

かに星雲からの 50 TeV 以上に延びるガンマ線スペクトルの検出 (星雲での陽子加速   を示唆する可能性がある)。

 ●他波長データとの比較からパルサー星雲や超新星残骸での磁場が星間空間程度に弱いこと、また高エネルギー電子の閉じ込め伝播の様相の解明に直接的な手がかりを与えている。

活動銀河のフレアの検出から高速ジェットの加速機構に於ける高エネルギー電子の振る舞いがあきらかになりつつある。

 ●バラエティに富んだ天体の非熱的高エネルギー現象についての、広い波長領域にまたがる研究グループの形成が進みつつある。

 ●研究成果は年2回の研究会の集録として出版している。二つの計画研究による装置の建設は順調である。建設経過の詳細と公募研究の成果は集録を参照されたい。

4. 今後の領域の推進方策

(a) 領域は新たな意外な観測データが先行する状態にある。(来年稼働が開始される)計画研究による大型望遠鏡による100 GeV 領域のデータを今後の領域発展の推進力とす る。 

(b) 多様な天体からの放射が本領域の観測から明らかになりつつある(図1参照)。これに対応して、

(c) 領域に関係して育ちつつある個別研究を科研費などで拡大する。X 線観測、電波観測など他波長の各共同研究機関の研究に積極的に参画し領域の基盤拡大を図る。

(d) 観測結果の物理内容は他の波長領域での天文学、また星の元素合成など - 原子核研究などと宇宙線研究、素粒子物理学などとにまたがる広い学際的研究の視野から、さらに新規の重点領域推進も考慮する必要がある。 

(e) 概算要求新プロジェクト、科研費特別推進などによる領域拡大の提案を計画している。COE研究なども含み多面的に今後の発展を図りたい。 

図1に、高エネルギーガンマ線源からのエネルギー流量 log (energy flux (erg cm-2 s-1))を縦軸とし、log (photon energy) の横軸に対して摸式的にプロットした。 図に示される多様な内容の発展が予想され、それらに即した多様な対応策が必要である。